令和5年度病院指標
病院指標
年齢階級別退院患者数
年齢区分 | 0~ | 10~ | 20~ | 30~ | 40~ | 50~ | 60~ | 70~ | 80~ | 90~ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
患者数 | 119 | 42 | 77 | 66 | 132 | 216 | 458 | 993 | 967 | 519 |
上記表は、当院に入院された患者さんのうち、2023年度に退院された患者さんの人数を10歳刻みで集計した値です。
当院は、浅間山の南のふもとに広がる地域の中核病院として、質の高い医療を幅広い年齢層の患者さんに提供できるように努めています。患者総数は3,589人で70・80歳代が最も多く、全体の55%を占めています。平均年齢は約70.6歳でした。 前年度と比較して、患者総数は91人減少となっています。しかし、0~9歳代が64人の患者が大きく増加しました。また、60歳以上の患者の割合が約8割を占め、地域社会の高齢化を反映していることが分かります。
診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
内科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数 (自院) |
平均 在院日数 (全国) |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
040081xx99x0xx | 誤嚥性肺炎 手術なし 処置2なし | 54 | 21.91 | 20.60 | 5.56% | 87.44 | |
110310xx99xxxx | 腎臓又は尿路の感染症 手術なし | 48 | 20.17 | 13.52 | 0.00% | 81.33 | |
060340xx03x00x | 胆管(肝内外)結石、胆管炎 内視鏡的胆道ステント留置術等 処置2なし 副傷病なし | 37 | 11.30 | 8.75 | 0.00% | 77.89 | |
050130xx9900x0 | 心不全 手術なし 処置1なし 処置2なし 転院以外 | 31 | 18.61 | 17.38 | 3.23% | 83.68 | |
030400xx99xxxx | 前庭機能障害 手術なし | 29 | 6.07 | 4.73 | 0.00% | 68.93 |
当院では高齢者施設からの紹介も多く、地域の高齢化率も高くなり、嚥下機能の低下を一因とする誤嚥性肺炎の症例が多くなっております。絶食補液抗生剤投与等で改善を図り、リハビリスタッフと協力して残された嚥下機能で在宅復帰できるよう工夫し、嚥下困難な症例に緩和ケアも含めての治療方針の見直しなどの検討を行っております。
また当院の診療圏は高齢者の割合が多く、特に高齢女性の場合, 発熱や体調不良の原因が膀胱炎に端を発した尿路感染であることも多くみられます。また前立腺に問題を抱える男性高齢者も増えてきており、やはり尿路感染症を起こしやすいようです。発熱はまず内科で診察することが多く、診断の結果が尿路感染症であった場合、内科で治療を開始し、泌尿器科と連携して治療を継続し再発予防につとめることが多いです。
2021年度より消化器内科専門医が常勤医となり、他院かかりつけだった肝胆道系症例が当院で診療を受けるようになり、増えてきております。また、いままでは当院外科で診療されていた肝胆道系疾患症例も消化器内科で診療を受けるようになったため、当院内科でも肝胆道系疾患の割合が増えております。
高血圧や糖尿病等を持病に抱えながら年齢を重ねる事により、心不全を発症し入院加療が必要な状態に陥る場合も多くみられます。内分泌内科チームや循環器内科チームと連携して、一般内科でも心不全症例の対応を行い、治療及び再発予防につとめております。
一般に前庭機能障害に分類される疾患であるめまいを主訴に受診され、入院加療を要する症例も多く、当院には耳鼻科常勤医はおりませんが、非常勤の耳鼻科専門医に指導を仰ぎながら治療を行っております。
外科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数 (自院) |
平均 在院日数 (全国) |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
060160x001xxxx | 鼠径ヘルニア 15歳以上 鼠径ヘルニア手術等 | 70 | 5.21 | 4.55 | 0.00% | 71.46 | |
060210xx99000x | ヘルニアの記載のない腸閉塞 手術なし 処置1なし 処置2なし 副傷病なし | 28 | 10.89 | 8.95 | 0.00% | 69.61 | |
060340xx03x00x | 胆管(肝内外)結石、胆管炎 内視鏡的胆道ステント留置術等 処置2なし 副傷病なし | 23 | 12.13 | 8.75 | 4.35% | 82.13 | |
060035xx010x0x | 結腸(虫垂を含む)の悪性腫瘍 結腸切除術等 処置1なし 副傷病なし | 18 | 20.56 | 15.12 | 0.00% | 73.17 | |
060330xx02xxxx | 胆嚢疾患(胆嚢結石など) 胆嚢摘出術等 | 16 | 6.13 | 5.98 | 0.00% | 59.94 |
鼠径ヘルニアの年齢は高齢化していませんが、腰椎麻酔での手術症例が増えているため在院日数が少し伸びています。合併症等のトラブルは見られていません。心不全等での腰椎麻酔、全身麻酔が出来ない症例に対しては局所麻酔で手術を行っています。腸閉塞症例の年齢は上がっていませんが、手術症例が多く、高圧酸素療法やイレウス管による減圧を行いながら治療しています。
浅間南麓地域は水道水が硬水であることが強く影響して総胆管結石症例が多く、また抗凝固剤内服患者も多いため一時的に胆管ステントを留置し、手術に望むことが多いです。
大腸癌は年齢的にはやや若年化していますが、検診で発見される症例よりも、癌性腸閉塞や出血、貧血で発見される進行癌の頻度の方が上がっています。そのため症例としては病期分類ステージⅢ以上の化学療法を必要とする症例が増えています。胆石症は総胆管への落下結石による症状が出ることから、一時的に胆管ステント留置や経皮経肝胆嚢ドレナージを置いて手術に望む症例が増加しています。そのため入院期間が伸びています。
循環器内科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数 (自院) |
平均 在院日数 (全国) |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
050130xx9900x0 | 心不全 手術なし 処置1なし 処置2なし 転院以外 | 56 | 35.70 | 17.38 | 3.57% | 87.73 | |
110310xx99xxxx | 腎臓又は尿路の感染症 手術なし | 23 | 22.35 | 13.52 | 4.35% | 86.78 | |
050030xx97000x | 急性心筋梗塞(続発性合併症を含む)、再発性心筋梗塞 その他手術あり 処置1なし 処置2なし 副傷病なし | 23 | 17.61 | 11.54 | 0.00% | 68.96 | |
040081xx99x0xx | 誤嚥性肺炎 手術なし 処置2なし | 17 | 28.06 | 20.60 | 0.00% | 85.18 | |
050050xx9910x0 | 狭心症、慢性虚血性心疾患 手術なし 心臓カテーテル法による諸検査等 処置2なし 転院以外 | 14 | 5.14 | 3.05 | 21.43% | 69.93 |
高齢者心不全の増加をうけて心不全入院が最多です。当院では病態改善後のリハビリテーションを積極的に行って生活機能維持に努めているため、平均在院日数は全国平均を上回る結果となっております。不安定狭心症・心筋梗塞といった急性虚血性心疾患の治療については積極的に救急を受けて昨年を超える件数となっております。慢性虚血性心疾患については安全性を優先し、より必要性・重症度の高い症例を選んで検査をしているため件数はやや減少しました。このため手術目的に心臓血管外科のある医療機関へ転院する割合も増加する結果となりました。
整形外科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数 (自院) |
平均 在院日数 (全国) |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
160800xx01xxxx | 股関節・大腿近位の骨折 人工関節置換術等 | 87 | 55.43 | 25.50 | 4.60% | 85.83 | |
160760xx97xx0x | 前腕の骨折 手術あり 副傷病なし | 29 | 3.17 | 4.76 | 0.00% | 61.00 | |
160690xx99xxxx | 胸椎、腰椎以下骨折損傷(胸・腰髄損傷を含む) 手術なし | 28 | 37.14 | 19.34 | 7.14% | 79.57 | |
070230xx01xxxx | 膝関節症(変形性を含む) 人工関節置換術等 | 27 | 45.59 | 21.96 | 0.00% | 73.59 | |
07040xxx01xxxx | 股関節骨頭壊死、股関節症(変形性を含む) 人工関節置換術等 | 21 | 40.67 | 19.55 | 0.00% | 69.48 |
骨粗鬆症に伴う骨折と人工関節手術が入院患者数の上位を占めています。人口高齢化に伴って、骨折と変形性関節症は増加しています。大腿骨近位部骨折に対して二次性骨折予防継続管理料が設定されました。大腿骨近位部骨折を受傷し手術が必要となった場合、入院中から骨折予防を開始し、外来で骨粗鬆症治療を継続していくことが求められています。大腿骨近位部骨折を受傷した場合、1年以内の骨折発生率が高いことと、骨折後の寿命が短くなることが明らかとなっているからです。骨折の治療、リハビリテーションに限らず、入院中より二次性骨折予防継続管理を実施し、外来で骨粗鬆症治療を継続します。入院から外来まで連続的な治療ができるように二次性骨折予防継続管理を組み込んだ大腿骨近位部骨折観血的手術のクリニカルパスを作成・運用していきます。
眼科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数 (自院) |
平均 在院日数 (全国) |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
020110xx97xxx0 | 白内障、水晶体の疾患 手術あり 片眼 | 251 | 2.00 | 2.54 | 0.00% | 75.50 | |
020200xx9710xx | 黄斑、後極変性 手術あり 水晶体再建術等 処置2なし | 13 | 4.00 | 5.67 | 0.00% | 70.54 | |
020220xx97xxx0 | 緑内障 その他手術あり 片眼 | – | – | 4.82 | – | – | |
020200xx9700xx | 黄斑、後極変性 手術あり 処置1なし 処置2なし | – | – | 5.71 | – | – | |
020160xx97xxx0 | 網膜剥離 手術あり 片眼 | – | – | 7.81 | – | – |
白内障を中心に、硝子体手術や低侵襲緑内障手術も行っています。クリニカルパスを使用し、白内障手術は1泊2日の入院期間で退院しています。
脳神経外科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数 (自院) |
平均 在院日数 (全国) |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
160100xx97x00x | 頭蓋・頭蓋内損傷 その他手術あり 処置2なし 副傷病なし | 33 | 16.97 | 9.88 | 0.00% | 78.88 | |
010060×2990401 | 脳梗塞 3日以内かつJCS10未満 手術なし 処置1なし エダラボン 副傷病なし RankinScale0~2等 | 29 | 18.52 | 15.70 | 3.45% | 73.48 | |
160100xx99x00x | 頭蓋・頭蓋内損傷 手術なし 処置2なし 副傷病なし | 20 | 19.25 | 8.38 | 0.00% | 66.90 | |
010040x199x0xx | 非外傷性頭蓋内血腫(非外傷性硬膜下血腫以外) JCS10以上 手術なし 処置2なし | 11 | 50.82 | 22.61 | 27.27% | 81.18 | |
010060×3990411 | 脳梗塞 3日以内かつJCS10以上 手術なし 処置1なし エダラボン 水頭症等 RankinScale0~2等 | 10 | 46.10 | 21.88 | 10.00% | 75.50 |
〈脳梗塞について〉
当院では脳神経外科・脳神経内科で脳卒中チームをつくり、24時間体制で診断・治療をおこなっています。超急性期には適応があればtPA治療(急性期再開通療法)をおこなっています。内頚動脈、中大脳動脈など太い動脈の血栓症に関しては、外部より血管内治療医を招聘し行っています。
慢性期リハビリテーションは地域包括ケア病棟、あるいはリハビリテーション専門病院の回復期病床と連携をとり行っています。2023年9月より回復期リハビリテーション病棟が開設され、急性期の治療後、自宅や社会に戻ってから日常生活を送れるようにリハビリを専門に行っています。
〈外傷・非外傷性による脳出血について〉
脳出血の中で、最も多い慢性硬膜下血腫に対しては、局所麻酔下で穿頭血腫除去術を施行し、頭蓋内血腫に対しては、全身麻酔下による開頭血腫除去を施行しています。急性外傷、疾患によって、手術が必要であれば緊急手術を行っています。
〈てんかんについて〉
当院のてんかんの治療は、基本的に神経細胞の異常興奮を抑える作用を持つ抗てんかん薬の内服治療が行われます。多くは抗てんかん薬の服薬を続けることで、てんかん発作を抑制することができ、通常の社会生活を送ることが出来るようになります。
それに対して、外科治療が有効な場合はてんかんセンターへ紹介致します。
脳神経内科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数 (自院) |
平均 在院日数 (全国) |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
010060×2990401 | 脳梗塞 3日以内かつJCS10未満 手術なし 処置1なし エダラボン 副傷病なし RankinScale0~2等 | 21 | 23.14 | 15.70 | 0.00% | 71.00 | |
040081xx99x0xx | 誤嚥性肺炎 手術なし 処置2なし | 16 | 25.31 | 20.60 | 12.50% | 87.31 | |
010160xx99x00x | パーキンソン病 手術なし 処置2なし 副傷病なし | 14 | 28.71 | 18.24 | 0.00% | 75.57 | |
110310xx99xxxx | 腎臓又は尿路の感染症 手術なし | 14 | 22.71 | 13.52 | 0.00% | 82.50 | |
010170xx99x00x | 基底核等の変性疾患 手術なし 処置2なし 副傷病なし | 10 | 26.30 | 14.68 | 0.00% | 75.30 |
脳梗塞:当院では脳外科医師との脳卒中オンコール体制で24時間365日の脳卒中診療体制をとっております。急性期治療だけでなく、リハビリを当院で継続して行う場合があり、患者さんや家族が希望すれば期間に余裕をもってリハビリを行うことも行っております。
尿路感染症:高齢者の尿路感染症の場合は、感染症による廃用が進む場合もあり、入院後にリハビリなども行う形をとっています。
誤嚥性肺炎:神経難病患者の在宅診療や脳梗塞後の患者さんを診療する機会も多く、ご高齢な方の誤嚥性肺炎での入院も多くなっています。
心不全:当院の診療圏は高齢者の割合が多いため、高血圧や糖尿病等を持病に抱えながら年齢を重ねると、心不全で入院加療が必要な状態に陥る事も多く、内科チームや循環器内科チームと連携して対応し、治療及び再発予防につとめております。
パーキンソン病:高齢の方は疾患の進行と共に生活を変える必要があり、安全の面からのアドバイスもしています。介護保険の導入、リハビリ、身障の申請なども行っています。訪問診療している神経難病患者は個々の患者さんに応じてレスパイト入院にも対応しており、在宅療養を継続する助けとなれば良いと考えております。
泌尿器科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数 (自院) |
平均 在院日数 (全国) |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
110080xx991xxx | 前立腺の悪性腫瘍 手術なし 前立腺針生検法 | 57 | 2.26 | 2.44 | 0.00% | 72.88 | |
110070xx03x0xx | 膀胱腫瘍 膀胱悪性腫瘍手術 経尿道的手術 電解質溶液利用等 処置2なし | 35 | 10.46 | 6.85 | 0.00% | 77.17 | |
11012xxx03xxxx | 上部尿路疾患 体外衝撃波腎・尿管結石破砕術 | 14 | 2.36 | 2.43 | 0.00% | 64.21 | |
11013xxx99xxxx | 下部尿路疾患 手術なし | – | – | 9.55 | – | – | |
11012xxx97xx0x | 上部尿路疾患 その他手術あり 副傷病なし | – | – | 7.08 | – | – |
前立腺癌疑いの患者さんを対象に確定診断目的に前立腺針生検を行っております。
通常入院は1泊2日を予定しています。検査後は出血・痛み・感染のコントロール・排尿障害の有無を観察し合併症対策に努めております。
膀胱腫瘍に対する初期治療として経尿道的手術を行っています。
通常入院日数は8日を予定していますが、病状が安定している患者さんには早期退院をおすすめします。また、合併症のある患者さんには安全な手術を遂行できるよう入院術前管理を行い、術後は各患者さんが安心して退院できるように排尿状態が安定するまでの入院を提供しています。
自然排石が難しい腎尿管結石に対して体外衝撃波結石破砕術を行っています。
予定入院日数は2日ですが術後の結石による痛みや尿路感染がある場合は、病状が安定するまで入院管理しています。
小児科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数 (自院) |
平均 在院日数 (全国) |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
060380xxxxx0xx | ウイルス性腸炎 処置2なし | 29 | 2.28 | 5.64 | 0.00% | 4.45 | |
0400801199x00x | 肺炎等 15歳未満または市中肺炎等 1歳以上15歳未満 手術なし 処置2なし 副傷病なし | 24 | 3.29 | 5.62 | 0.00% | 3.63 | |
040070xxxxx0xx | インフルエンザ、ウイルス性肺炎 処置2なし | 18 | 2.83 | 5.86 | 0.00% | 3.83 | |
030240xx99xxxx | 扁桃周囲膿瘍、急性扁桃炎、急性咽頭喉頭炎 手術なし | 12 | 2.83 | 5.51 | 0.00% | 2.58 | |
030270xxxxxxxx | 上気道炎 | – | – | 4.72 | – | – |
令和5年度の急性期感染症については新型コロナウイルスの感染流行がほぼ落ち着いた一年でした。従来の流行性感染症では、夏期にRSウイルス感染症の流行が早期に始まり(2位)、冬期ではインフルエンザも年度末を中心に大流行を認めました(3位)。その中でもインフルエンザB型の大流行も令和6年早々に始まりました。入院治療患者の割合は脱水をともなう感染性胃腸炎が増加した結果(1位)を認めました。しかしながら、流行性感染性胃腸炎のなかで最も多いロタウイルス胃腸炎はほとんど経験しませんでした。これはロタウイルスワクチンが定期接種となったためと思われます。
小児では、急性期疾患が例年上位を占めますが、新生児関係の診療も多い部類に入ります。院内分娩取り扱い数は例年平均よりは減少しておりますが、急激な落ち込みは無く、分娩数も徐々に回復してきた印象でありました。目立った重症新生児はみられず、院内感染も無く安心安全な分娩の一年でありました。
産婦人科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数 (自院) |
平均 在院日数 (全国) |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
120090xx97xxxx | 生殖器脱出症 手術あり | 15 | 5.93 | 7.89 | 0.00% | 75.47 | |
120140xxxxxxxx | 流産 | 11 | 1.09 | 2.43 | 0.00% | 38.09 | |
060380xxxxx0xx | ウイルス性腸炎 処置2なし | – | – | 5.64 | – | – | |
120050xx01x0xx | 絨毛性疾患 子宮内膜掻爬術等 処置2なし | – | – | 2.44 | – | – | |
120090xx99xxxx | 生殖器脱出症 手術なし | – | – | 5.18 | – | – |
「生殖器脱出症 手術あり」とは、子宮脱や腟前壁脱などの骨盤臓器脱に対して行っている手術分類です。当院では、6日間入院でのクリニカルパスを用いて行っております。
初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数
初発 | 再発 | 病期分類基準 | 版数 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Stage -I | Stage II | Stage III | Stage IV | 不明 | ||||
胃癌 | – | – | – | 14 | – | – | 1 | 8 |
大腸癌 | – | 12 | 19 | 28 | 14 | 13 | 1 | 8 |
乳癌 | – | – | – | – | – | – | 1 | 8 |
肺癌 | – | – | – | – | – | – | 1 | 8 |
肝癌 | – | – | – | – | 13 | 17 | 1 | 8 |
胃癌:ピロリ菌の除菌により減少傾向にありますが、胃カメラ検診を受けていない患者や除菌後、胃癌の増加により進行胃癌で発見される症例が増えています。胃癌の場合、肝転移した場合の根治は望めないことから内視鏡での早期発見が必要です。再発率としてはやや減少傾向です。
大腸癌:定年してから10年以内の発症が増えています。化学療法の選択枝が増えていることもあり、再発率としては減少傾向で、再発しても5年の生存率を得られる症例が増えています。
乳癌:検診で経過を追っている最中に癌と診断される症例や2cm未満で腫瘤を自覚する症例が多く、早期発見につながっています。高齢の閉経後、乳癌へ進行する症例が多い傾向にあります。
肺癌:現在、当院では手術を行っておりません。螺旋CTによる肺癌検診を行っており、発見した場合は、近隣の病院へ紹介し手術となっています。
肝癌:最近は肝炎に関係なく発症する症例も見られます。高齢者の場合は、ラジオ波焼灼+TACE(肝動脈化学塞栓療法)または、TACE施行後に縮小部位をラジオ波焼灼する手術を行っています。高齢者の症例が多いことから肝動脈化学塞栓療法やラジオ波焼灼が多く選択されています。
成人市中肺炎の重症度別患者数等
重症度 | 患者数 | 平均在院日数 | 平均年齢 |
---|---|---|---|
軽症 | 15 | 12.73 | 61.27 |
中等症 | 65 | 19.15 | 83.45 |
重症 | 25 | 24.56 | 86.60 |
超重症 | – | – | – |
不明 |
仕事や日常生活での無理がたたり、喫煙や飲酒もひきがねとなった働き盛りの中高年の肺炎患者も一定数あり、そのような肺炎は軽症であることが多く、入院安静や禁酒禁煙で比較的短期間の入院で軽快し退院されます。
その一方で肺炎の主体は高齢者です。加齢による嚥下機能低下や呼吸機能低下により喀痰排出能力が低下し、自覚症状も低下してくることから重症化してから受診されることも多くなっています。
このような症例は入院後も治療に難渋し入院期間が長引くことも多いのが現状です。そのような高齢者も肺炎治癒をめざし、治癒後もリハビリ等で在宅復帰を目指しております。
超重症となってから受診される症例では治療の効果が上がらず、重症例の様にリハビリテーションに移行することなく亡くなってしまうこともあり、入院期間は重症例より短くなる傾向があると考えられます。
脳梗塞の患者数
ICD10 | 傷病名 | 発症日から | 患者数 | 平均在院日数 | 平均年齢 | 転院率 |
---|---|---|---|---|---|---|
I63$ | 脳梗塞 | 3日以内 | 169 | 33.56 | 79.09 | 6.29% |
その他 | – | – | – | – |
一過性脳虚血発作は受診時に症状が消失していることが多いですが、48時間以内の再発率が高いことから数日入院し、検査、治療を開始しています。
当院では脳神経外科・脳神経内科で脳卒中チームをつくり、24時間体制で診断・治療をおこなっています。超急性期には適応があればtPA治療(急性期再開通療法)をおこなっています。
内頚動脈、中大脳動脈など太い動脈の血栓症に関しては、外部より血管内治療医を招聘し行っています。
慢性期リハビリテーションは、地域包括ケア病棟、あるいはリハビリテーション専門病院の回復期病床と連携をとり行っているため、リハビリテーション専門病院への転院が大部分を占めています。2023年9月より回復期リハビリテーション病棟を開設しました。
診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
整形外科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均術前日数 | 平均術後日数 | 転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
K0461 | 骨折観血的手術(大腿) 等 | 70 | 6.06 | 46.56 | 1.43% | 81.17 | |
K0821 | 人工関節置換術(膝) 等 | 52 | 4.71 | 39.96 | 0.00% | 71.92 | |
K0811 | 人工骨頭挿入術(股) | 43 | 6.74 | 44.95 | 6.98% | 85.05 | |
K0462 | 骨折観血的手術(前腕) 等 | 37 | 3.03 | 15.38 | 0.00% | 60.19 | |
K0483 | 骨内異物(挿入物を含む)除去術(下腿) 等 | 24 | 0.63 | 1.25 | 0.00% | 54.58 |
骨粗鬆症に伴う骨折手術と人工関節手術が手術件数の上位となっています。当院では人工関節センターを設置し、入院前のリハビリテーション、術前自己血採血を含めた入院・手術準備から、術後の外来経過観察まで、高齢の変形性膝関節症・股関節症患者にも安全に人工関節置換術が行える体勢を整えています。また、効率的医療が求められる時代ですが、効率的とは入院日数が短いということを目指すのではなく、退院時に十分な生活能力が再獲得できていることが最も効率的な医療であるとの考えに基づき、適切なリハビリテーションを実施したうえで退院を迎えられるように、術後リハビリテーションのスケジュール設定をしています。
2023年9月より回復期リハビリテーション病棟が開設され、急性期の治療後、自宅や社会に戻ってから日常生活を送れるようにリハビリテーションを専門に行っています。
外科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均術前日数 | 平均術後日数 | 転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
K6335 | ヘルニア手術 鼠径ヘルニア 等 | 42 | 1.29 | 3.40 | 0.00% | 74.60 | |
K672-2 | 腹腔鏡下胆嚢摘出術 | 36 | 2.00 | 5.33 | 0.00% | 66.72 | |
K634 | 腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術(両側) | 28 | 1.04 | 2.46 | 0.00% | 66.75 | |
K688 | 内視鏡的胆道ステント留置術 | 24 | 0.71 | 17.00 | 4.17% | 81.13 | |
K719-3 | 腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術 | 15 | 12.53 | 12.87 | 0.00% | 74.07 |
ヘルニア手術の年齢がやや上がっています。平均在院日数もあまり変わり有りません。腹腔鏡下ヘルニア手術の年齢が若年化しており,そのため在院日数も減っています。
腹腔鏡下胆嚢摘出術は若年化しており、在院日数も減少傾向です。内視鏡下胆管ステント留置の年齢は変わりませんが、処置後の術後膵炎合併症が増加しているため在院日数が伸びています。乳房部分切除後の肝内胆管結石症の患者で、他院でダブルバルーン内視鏡で採石を行った症例が1例ありました。
大腸癌の年齢は変わらないが、内科での術前検査から大腸癌が判明して転科になり、手術になる症例が増えています。そのため術前入院日数が増えていますが、術後の在院日数は伸びていません。
眼科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均術前日数 | 平均術後日数 | 転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
K2821ロ | 水晶体再建術 眼内レンズを挿入する場合 その他のもの 等 | 250 | 0.00 | 1.00 | 0.00% | 75.52 | |
K2801 | 硝子体茎顕微鏡下離断術 網膜付着組織を含むもの 等 | 19 | 0.95 | 2.05 | 0.00% | 70.05 | |
K2686 | 緑内障手術 水晶体再建術併用眼内ドレーン挿入術 | – | – | – | – | – | |
K2802 | 硝子体茎顕微鏡下離断術(その他) 等 | – | – | – | – | – | |
K2682イ | 緑内障手術 流出路再建術 眼内法 | – | – | – | – | – |
眼科では現在、手術の木曜日を除く、月曜日から金曜日まで外来診察を行っており、白内障、緑内障、角膜疾患、ぶどう膜炎、網膜硝子体疾患と幅広く診療を行っております。
また、糖尿病、高血圧などの全身疾患の合併症を起こすことが多く、他科と連携しながら予防、治療も行っております。
手術では白内障を中心に、加齢黄斑変性、糖尿病性黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫等に対する硝子体注射を積極的に行っております。
緊急の手術以外にはなりますが、硝子体手術や緑内障手術も行っています。
循環器内科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均術前日数 | 平均術後日数 | 転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
K5492 | 経皮的冠動脈ステント留置術 不安定狭心症に対するもの | 23 | 0.04 | 23.83 | 4.35% | 69.17 | |
K5972 | ペースメーカー移植術 経静脈電極の場合 | 11 | 6.09 | 16.36 | 0.00% | 82.64 | |
K5951 | 経皮的カテーテル心筋焼灼術 心房中隔穿刺又は心外膜アプローチを伴うもの | – | – | – | – | – | |
K5491 | 経皮的冠動脈ステント留置術 急性心筋梗塞に対するもの | – | – | – | – | – | |
K5493 | 経皮的冠動脈ステント留置術 その他のもの | – | – | – | – | – |
当院における心臓カテーテル治療は、主に不安定狭心症・急性心筋梗塞といった即時のカテーテル検査および治療が必須とされている疾病に対して行われている傾向があります。
慢性虚血性心疾患に対しては、術前にしっかり病態を評価してから保存的治療を行い、どうしてもカテーテル治療が必要と考えられるものにのみ治療を行う方針です。このため急性虚血性心疾患治療30件に対して慢性虚血性心疾患治療6件という急性期に偏ったバランスになっていると考えます。リスク(副作用・危険性)とベネフィット(有効性・安全性)をしっかり見定めて患者さんの不利益を防ぐ事を重視しています。
経皮的カテーテル心筋焼灼術については2023年度に術者不在の期間があり件数が減少しておりますが、2024年に入ってから再開しております。
内科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均術前日数 | 平均術後日数 | 転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
K6871 | 内視鏡的乳頭切開術(乳頭括約筋切開のみ) 等 | 23 | 1.87 | 6.43 | 0.00% | 75.13 | |
K688 | 内視鏡的胆道ステント留置術 | 16 | 2.25 | 27.19 | 0.00% | 81.44 | |
K6152 | 血管塞栓術(頭部、胸腔、腹腔内血管等)(選択的動脈化学塞栓術) | 15 | 1.20 | 14.40 | 0.00% | 77.53 | |
K635 | 胸水・腹水濾過濃縮再静注法 | – | – | – | – | – | |
K697-31ロ | 肝悪性腫瘍ラジオ波焼灼療法(2cm以内)(その他) 等 | – | – | – | – | – |
慢性肝疾患の原因は、以前はB型肝炎、C型肝炎、アルコール性肝炎が主でしたが、近年は代謝疾患(糖尿病、脂質異常症、肥満など)を由来とする脂肪肝関連疾患が増加しています。慢性肝疾患の大きな合併症として肝細胞癌があり、手術、ラジオ波焼灼、肝動脈塞栓術(血管塞栓術)が治療手段として有用です。肝細胞癌は再発が多く反復治療を要し、血管塞栓術のニーズが高くなっています。経動脈的に抗腫瘍薬、塞栓物質を癌に注入し、壊死を図る治療手技です。
また血管塞栓術は肝細胞癌の治療手段としてのみならず、出血性疾患(消化管出血など)、腹部内臓動脈瘤の治療にも応用され、低侵襲治療としての有用性が評価されています。
泌尿器科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均術前日数 | 平均術後日数 | 転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
K8036イ | 膀胱悪性腫瘍手術 経尿道的手術 電解質溶液利用のもの | 35 | 2.57 | 7.69 | 0.00% | 77.49 | |
K768 | 体外衝撃波腎・尿管結石破砕術(一連につき) 等 | 13 | 0.23 | 1.00 | 0.00% | 63.08 | |
K783-2 | 経尿道的尿管ステント留置術 | – | – | – | – | – | |
K7981 | 膀胱結石、異物摘出術 経尿道的手術 | – | – | – | – | – | |
K8036ロ | 膀胱悪性腫瘍手術 経尿道的手術 その他のもの | – | – | – | – | – |
膀胱腫瘍に対して腰椎麻酔下経尿道的手術(内視鏡手術)を行っています。 予定入院期間8日、多くの場合はこの内視鏡手術で根治治療となりますが、切除しきれない浸潤性がんや転移を有するがんにおいては追加治療を高度医療機関に紹介致します。
自然排石が難しい腎尿管結石の治療として体外衝撃波結石破砕術を行っています。 予定入院日数は2日、必要に応じて尿管ステント留置します。
破砕効果不十分な場合は追加で衝撃波治療を繰り返し行いますが、治療効果が見られない場合は尿管鏡治療を行います。
脳神経外科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均術前日数 | 平均術後日数 | 転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
K164-2 | 慢性硬膜下血腫穿孔洗浄術 | 27 | 3.81 | 15.93 | 0.00% | 78.52 | |
K1643 | 頭蓋内血腫除去術(開頭して行うもの) 脳内のもの | – | – | – | – | – | |
K178-4 | 経皮的脳血栓回収術 | – | – | – | – | – | |
K1771 | 脳動脈瘤頸部クリッピング 1箇所 | – | – | – | – | – | |
K1692 | 頭蓋内腫瘍摘出術 その他のもの 等 | – | – | – | – | – |
〈脳外科手術について〉
慢性硬膜下血腫は外傷後、慢性的(通常は3週間以降)に血腫がたまり症状を起こす疾患であり、局所麻酔下で穿頭血腫除去術を行っています。
脳内出血は高血圧などにより動脈硬化きたした穿通枝(脳内の細い血管)が破綻して出血を起こし発症するものです。意識障害、片麻痺、言語障害などが主な症状です。
発症、部位、血腫の大きさ、症状などより手術適応を判断し、開頭術(顕微鏡を使用)CT誘導下(CTを撮影しながら血腫の位置を確認しながら摘出)、神経内視鏡下のいずれから手術方法を選びます。手術後症状の回復には長期のリハビリテーションを必要とします。
脳動脈瘤は脳内の比較的太い動脈の一部がふくれて出血を起こすクモ膜下出血。あるいは、偶然にも脳検査などによって発見されます。クモ膜下出血をきたした場合は、再破裂を防ぐ為に開頭術によるクリッピング術(顕微鏡使用)、カテーテルを通して行うコイル塞栓術のいずれかの方法を状態、動脈瘤の場所などに応じて決定します。破裂していない動脈瘤の場合、経過観察を含め慎重に治療方法を決定します。
脳腫瘍は頭蓋内に発生した腫瘍をさしますが、腫瘍が大きく脳の圧迫がある症状をひき起こし、腫瘍周囲にむくみをきたしている重要神経組織、血管組織の傍に存在する場合、手術適応になることがあります。開頭し顕微鏡下で腫瘍を摘出します。
周囲には重要組織があるため脳波モニター、神経内視鏡、超音波ドプラー、術中血管造影などを駆使して行います。
水頭症手術はクモ膜下出血後と特発性正常圧水頭症に対して行っています。特発性水頭症は認知機能低下、歩行障害、尿失禁などの症状を徐々におこすもので、認知症の二次的原因疾患の一つです。シャント手術により認知機能低下、歩行障害、尿失禁に改善が期待できます。
産婦人科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均術前日数 | 平均術後日数 | 転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
K802-22 | 膀胱脱手術 その他のもの | 13 | 1.00 | 4.00 | 0.00% | 74.85 | |
K9091イ | 流産手術 妊娠11週までの場合 手動真空吸引法によるもの | 10 | 0.00 | 0.00 | 0.00% | 38.90 | |
K8651 | 子宮脱手術 腟壁形成手術及び子宮位置矯正術 | – | – | – | – | – | |
K911 | 胞状奇胎除去術 | – | – | – | – | – | |
当科で行っている手術の過半数は骨盤臓器脱に対する手術です。その他、良性卵巣嚢腫に対する手術や子宮全摘術、帝王切開手術、初期流産に対する流産手術などを行っております。流産手術に関しては、人工妊娠中絶は含まれておらず、すべて健康保険が適応される手術が対象となっております。
その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)
DPC | 傷病名 | 入院契機 | 症例数 | 発生率 |
---|---|---|---|---|
130100 | 播種性血管内凝固症候群 | 同一 | – | – |
異なる | – | – | ||
180010 | 敗血症 | 同一 | – | – |
異なる | – | – | ||
180035 | その他の真菌感染症 | 同一 | – | – |
異なる | – | – | ||
180040 | 手術・処置等の合併症 | 同一 | 12 | 0.33% |
異なる | – | – |
〈外科〉
2023年度のDIC(播種性血管内凝固症候群)は胆管炎、胆管結石症によるものがほとんどで、憩室炎や大腸腫瘍関連は有りませんでした。ドレナージ処置、リコモジュリン投与、AT-Ⅲ製剤投与の内科的治療で軽快しています。
また、真菌症症例は認められませんでしたが、手術合併症としてはERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)施行後の膵炎が最も多く、術後創部感染、カテーテル感染、点滴による静脈炎が認められました。
〈脳神経外科〉
水頭症に対するシャント術は、シャントチューブが細いため閉塞することがあるので、再手術をおこない症状の改善をはかります。
頭部手術で人工骨を使用することがあるので、時に異物反応をおこし感染をおこすことがあります。通常は異物を除去することで解決します。
〈脳神経内科〉
当院は病院全体で年に2000台以上の救急車を受けており、脳神経内科領域を超えて敗血症など感染症の入院も担当させていただいています。既往症を多数抱えている高齢患者が敗血症となり入院する症例が増えています。
医療の質指標
リスクレベルが「中」以上の手術を施行した患者の肺血栓塞栓症の予防対策の実施率
肺血栓塞栓症発症のリスクレベルが「中」以上の手術を施行した退院患者数(分母) | 分母のうち、肺血栓塞栓症の予防対策が実施された患者数(分子) | リスクレベルが「中」以上の手術を施行した患者の肺血栓塞栓症の予防対策の実施率 |
---|---|---|
404 | 394 | 97.52% |
下肢骨折・下肢人工関節置換術等下肢静脈血栓症・肺塞栓症ハイリスクな患者に対しては、フットンプ使用、下肢弾性包帯あるいは弾性ストッキング装用し、下肢静脈血栓症を予防しています。下肢人工関節置換術においては、出血性素因等なければ全例抗凝固薬の予防投与を行います。
血液培養2セット実施率
血液培養オーダー日数(分母) | 血液培養オーダーが1日に2件以上ある日数(分子) | 血液培養2セット実施率 |
---|---|---|
1047 | 971 | 92.74% |
細菌感染を原因とする疾患として、当院でも急性肺炎、急性尿路感染症、急性胆管炎、胆のう炎などの症例を多く診療しております。その他感染性心内膜炎を診療することも多くあります。これらの疾患では治療に用いる抗生剤の選択と投与期間が重要であり、その根拠として、各種培養検査が必要になります。肺炎だと喀痰培養、尿路感染だと尿培養などが重要ですが、いずれの疾患でも菌血症に陥ることがあり、そのような場合に血液培養を行います。熟練した医師、看護師等により常在菌が混入しないよう、混入しにくい部位を選び、局所をよく消毒し、清潔操作で行うわけですが、それでもなお常在菌が混入して判断に迷うことがあり、起因菌か、もしくは混入した関係の無い菌であるかを判断するために、複数回の培養を行う事が多くなっております。これも患者さんの負担が大きい場合や、病態、培養器具の供給不足等の問題もあり、必要に応じて1回に減らす場合があります。
広域スペクトル抗菌薬使用時の細菌培養実施率
広域スペクトルの抗菌薬が処方された退院患者数(分母) | 分母のうち、入院日以降抗菌薬処方日までの間に細菌培養同定検査が実施された患者数(分子) | 広域スペクトル抗菌薬使用時の細菌培養実施率 |
---|---|---|
190 | 170 | 89.47% |
細菌感染症の治療において、抗菌薬投与は重要な治療手段の一つに挙げられます。抵抗力の弱い高齢者や、慢性閉塞性換気障害、陳旧性心筋梗塞、神経難病、各種癌で化学療法を行っている症例などは細菌感染症を繰り返すことが多く、抗菌薬治療をおこなう回数が増えることになり、結果として抗菌薬の効かない耐性菌による細菌感染症を起こすことも増えてきます。その場合、耐性菌にも有効な広域スペクトル抗菌薬を用いて治療することになります。
理論上、広域スペクトル抗菌薬にも耐性菌が生じる危険性があり、そうなると有効な抗生剤の存在しない病原菌が発生しかねないこととなり、治療法が無くなる事態も想定され非常に危険です。
従って、広域スペクトル抗菌薬は耐性菌の可能性の低い症例に最初から用いる事は避けて、起因菌をはっきり同定して、他に有効な抗生剤が無い場合に用いる事になります。
当院でも広域スペクトル抗菌薬は、細菌培養で感受性があることがわかった基礎疾患のある症例に用いるよう心がけております。
ただし、初診時に致死的になりかねない重症例では、最初から広域スペクトル抗菌薬をもちいることもあり、更に抗菌薬投与後に培養しても、菌が培養されない(偽陰性)事になるため、培養を出せないケースもあります。